2013/12/12

桃色四葉Z日本巡業弐零壱参 五蘊劇伴音楽集



 「ツアーのサントラ」という名目でライヴの曲間SEを集めたアルバムを(限定盤とは言え)作成し販売する。まあ、全くあり得ないコンセプトではないのだけど、アイドルファンにアイドルの声が一切入っていないCDを売ってしまう、という商売はなかなか豪快だ。コレを作るという行為自体が半ば出オチ的なサプライズだが、問題はそのクォリティにあった。

 全7曲のソングライターとして主に過去のももクロ楽曲に関わったミュージシャンを起用。参加したのは永井ルイ(月と銀紙飛行船)、NARSAKI(ピンキージョーンズ、黒い週末他)、長谷川智樹(宙飛ぶ!お座敷列車、僕らのセンチュリー・アレンジ)、大久保薫(初参加)、和嶋慎治(黒い週末・ギター)、木村篤史(初参加。GOUNNのアレンジ担当)、横山克(Chai Maxx、空のカーテン他)というメンバー。大久保、和嶋、木村は初の楽曲提供となるが、他の作曲陣は既に馴染み深いメンツ。

 永井ルイの「曼荼羅」~プロローグ~はオリエンタルなオープニング曲、と言うコトで何故か個人的にはストーンズのContinental Driftを思い出してしまったのだけど、まあ似てると言うより雰囲気があるという話。「ゴダイゴっぽい」という声も聴いたが、まあBirth of Odysseyと言いたいんだろうけどさほど似ていない。ぶくぶくと沸き立つようなサウンドが印象的で、個人的には一番好きな曲。

 「運命」~輪~はNARASAKIが作曲。イントロの40秒近くが非常に小さい音で収録されているのでパーカッションが聞こえるまで不安になるが(笑)この曲から久米明(!)のナレーションが入るが、声の入らないヴァージョンも聴いてみたかった。前半のエスニックアンビエントという雰囲気のパートから、リズミックな後半部へ展開するとなんとなくNHK特集かなんかのBGMという雰囲気に。前半の感じで押して欲しかったのは好みの問題。

 「巡礼」~廻~は長谷川智樹の曲。お座敷列車や僕らのセンチュリーのグラムロック的な方向性とは全く違った、今回のサントラ全体の雰囲気に合わせた楽曲。四つ打ちのビートが登場して、前2曲よりダンサブルでポップな感じになっているのは持ち味か。

 唯一英語のタイトルが付けられた「Meditation」~転~は初参加の大久保薫の作品。ピンク・フロイドのEchoesを彷彿とさせるイントロにニヤリとしてしまう。そのせいでもう少しヘヴィなビートを期待してしまうのだけど、残念ながら基本的に軽め。でもコーラス系の音色で弾かれるキーボードもちょっとリック・ライトっぽいフレージングだったりして、やっぱりフロイドっぽいのだ。

 「祈りの鼓動」~生~は和嶋慎治の初提供曲。ナレーションが終わってから曲が始まるのが嬉しい。勿論和嶋自身のヘヴィなギターが聴けるのがこの曲の魅力。何人かの指摘もあったが、確かにこの曲は生のドラムでもっとハードに聴かせて欲しかったが、サントラ全体のサウンドの統一を考えたらコレが正解か。
 他の曲はエスニックな楽器音とそのフレージングでアジア風のサウンドを作っていたが、元々和風なギターが得意な和嶋はその雰囲気をギターで出しているのが異彩を放つ。

 「光と影」はサブタイトルが付いていなく、最も短い曲で、インタールードとしての色彩が強い。最もアンビエント色が強く、コーラスとシタール系のサウンドが曲の中心を為している。
 この曲はこのあとリリースとなるシングルの、また、このツアーのリードトラックでもあるGOUNNのアレンジを手がけた木村篤史が作曲しており、この曲の後にGOUNNが披露されるという流れもあるため統一した雰囲気を狙ったと思われる。この曲はあくまでイントロであり、存在感の薄さは狙いなのだ。
 
 ステージ本編のクロージングとして使われた「旅」~時の流れ~横山克の曲。いかにもエンドロールのバックで流れそうな大団円的サウンドで、あまりエスニックな音には拘っていない。GOUNNの世界から通常のももクロワールドへの繋ぎ、という意味もあるのだろうか?

 あえて言うならサウンド的には不満がなくもない。決してクォリティが低いわけではないけど、やはり打ち込み主体のサウンドが楽曲を生かし切っていないと感じる部分もあるからだ。だが、あくまでツアーの幕間SEであり、主目的を考えると予算的にこのメンバーを揃えただけでも限界だろうことは想像に難くない。むしろ予算オーバーの部分を補うためにサントラとしてリリースしたんじゃないか、と邪推したり。


 ナレーションに関して少し。仏教的世界観をビジュアル・サウンドイメージとして多用しているため、最初は説教臭い、宗教臭いような内容として受け止めて、正直俺なんかは拒否感を示しかけたんだけど、実際良く聴くともの凄く当たり障りのない、当たり前のことしか言っていない。この辺のバランス感覚、特定の宗教観に偏らないようにしたのは立派な判断だったと思う。

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